CAを経験・その後 ~CREW WORLD編集長 渡邊詩織編~
2020年11月18日|CREW WORLD編集部
第一回目はCREW WORLD編集長 渡邊詩織氏のインタビュー。
現在、編集長の他にスペインで空間コンセプトデザイナーやモデルとして活躍している。
どのようにしていまのキャリアに至ったのか、大切にしている軸について教えてくれました。
インタビューワー:松永有加(CREW WORLD Official MUSE)
今日はよろしくお願いします!
渡邊詩織
CREW WORLD編集長・空間コンセプトデザイナー・ライター
(東京都出身)
日本外国語専門学校、短期大学を同時卒業後、日系航空会社にて国際線客室乗務員を約6年間経験。乗務3年目に、CREW WORLDに出会い、 CAの潜在的な可能性やマンネリ化の打開策を考える。MUSEとして2年超、海外にまつわる情報を投稿したことで様々な視点の変化を体験。公私含め47カ国で世界のデザインに触れ、空間デザインへのキャリアチェンジを決意。2018年よりフリーランスとして活動中。 現在はスペイン、バルセロナに在住。
しおりさんはCAを6年経験されて退職したそうですが、辞めようと思ったきっかけは何だったんですか?
CAという仕事自体は好きだったのですが、不規則な生活は体力に自信があった私でもハードなものでした。 時差や気温差、昼夜逆転、プライベートの生活など、思っていた以上に身体への負担が大きくて。 4年目の年に精神過敏で眠れなくなったり、体調に影響が出るようになってしまい数か月休職したんです。 その時に、CAはこの先も長く続けることは難しい仕事であると痛感し、セカンドキャリアについて真剣に考えるようになりました。
そうだったんですね。休養期間はどのように過ごしたのですか?
病院の先生が、「気持ちの良いところで、毎日散歩するみたいな生活をしてみたら副交感神経が高まるかもね。」とおっしゃったこともあり、1ヶ月くらい西表島で農業を手伝いました。
沖縄で農業!?
体調が悪いのに農業!?と思うかもしれませんが、土壌に生息する細菌に抗炎症や免疫調節、ストレス耐性などの性質があるという研究結果が出ていることを知り、家で抜け殻みたいな生活をするよりも回復しそうと思ったんです。
実際に沖縄で過ごしてみてどうでしたか?
マンゴーハウスとパイナップル畑をメインにお手伝いをして過ごしていたんですが、日に日に体調がよくなってくるのを感じることができました。 本当に良い環境だったと思います。
その後東京に戻って復帰したんですね。
はい。 体調がよくなった時、CAは後12年は続けられたらいいなと思いました。 ずっと続けることは難しいと感じていたので、ある程度の期間を決めて次の仕事への準備をしようと思ったのです。
詩織さんの場合、体調の事を考えて転職を意識されたんですよね?
確かに休職したことは大きかったですが、実は休職する前の3年目に差し掛かった頃からいわゆるマンネリ化に悩んでいたんです。
CAは3年目に一度辞めたくなる時期がくると言われていますね(笑)
多くのCAが一度は感じるものだと思います。 大好きな仕事だったのですが、5年先、10年先のビジョンを描くには少し難しさを感じていました。
KoLaboは自分で調べて知ったんですか?
駒崎に出会ったきっかけは、機内でお会いした有名イラストレーターの方を介してでした。少しお話させていただいたのですが、後日彼が駒崎に機内でのエピソードとして共有したことで、私と今となっては人生のメンターでもある駒崎が繋がることになりました。
そこからセカンドキャリア支援が始まったんですね。
はい。 でも、はじめにマンネリ化やキャリアについての相談をしたときに返ってきた答えは「CAの仕事を、別の視点、ビジネス的に見てみること」でした。
なかなかざっくりとしていますね(笑)
転職の流れになるのかな?と思っていたので、正直少し拍子抜けしました(笑) それでも駒崎の人柄や考え方に惹かれ、お仕事体験のような形でKoLaboに携わることを決めました。 この体験が、後のいろいろな活動に活きているなと思います。
お仕事体験ではどんなことをしたんですか?
ほとんど全て手探りで、本当にいろいろなことをしました。(笑)
・空間視察のための国内外ホテルめぐり
・アットコスメへの旅行関連記事を寄稿
・KoLabo の企業HPを制作
・ASEAN女性起業家会議の選考動画(会社事業紹介)を制作
・LINE スタンプを制作
などをやりました。
これらを全部一人で!?
未経験の事ばかりで不安もありましたが、人生はできないことや知らないことに溢れているからこそ、新しいことは積極的にやってみようと思ってチャレンジしていました。
CAはフライト業務が中心なので、ビジネスの場面でどう動けばいいのかイメージするのは難しいですよね。
専門学生時代もCAにフォーカスし、社会人としてもCAの世界しか知らなかったので、データの共有方法や企業の方へのメールの書き方、プロジェクトの進め方、ビジネス場面での頻出用語など、はじめてのことづくしだったのではじめは結構苦労しました(笑)
それでいうと、社会人になってからは年齢や職歴など様々なフィルターがかかり新しい環境に挑戦する機会が少ないように感じます。 私たちも無意識の内に挑戦のハードルを上げてしまっているというか。 詩織さんは挑戦することへの抵抗はありませんでしたか?
最初はもちろん不安もありましたが、「とりあえずやってみる」をモットーに声をかけていただいた仕事は積極的に受けるようにしていました。 「自分にはできない」と思うような仕事も、やってみたら意外となんとかなったり、「こうやってやるんだな」とか、やってみてはじめて気づくことがとても多くて、それが刺激になりました。 今の仕事をはじめてから「どうやってなったの?」などハウツーの質問をたくさんいただくのですが、全て新しい挑戦を通じて出会った人や環境のおかげだと思っています。
今の仕事(空間コンセプトデザイナー)になりたいと思ったのも様々な経験からインスピレーションを受けて?
実は最初のきっかけは機内だったんです。 機内でも休みなく働くビジネスマンの方々と接して、日本人にとって「働く」と「学ぶ」ということが生活の大半を占めることを常に感じていました。 日本人にとって過ごす時間の長いオフィスや学びの施設などは、もっとアップデートできるはずという想いが強くなりました。
はじめからフリーランスでやろうと決めていたんですか?
KoLaboでの経験を通じて、プロジェクト毎に内容が変わり、新たな人と繋がり働くというスタイルがとても好きだということを実感しました。 大企業では好きなプロジェクトを好きなようにというのが難しい傾向にあるため、次はより自由なスタイルで活動できるフリーランスになろうと決めました。
活動拠点を国内ではなく海外に決めた理由は?
CAになるために学んだ英語を実際に海外で使えるようになった18歳の時、世界が一気に広がったという衝撃があり、その時からいつか海外に出たいという想いを強く持っていたのでチャレンジしてみようと思いました。
今の拠点はスペインのバルセロナですよね?
はい。CA時代に公私含め70都市以上を訪れましたが、中でもバルセロナの雰囲気にとても惹かれました。 バルセロナでは街行く人も、建築も、色に溢れていてとてもエネルギッシュな気持ちになるんです。 特に建築は、サグラダファミリアなどモデルニスモを中心に自然からインスピレーションを受けた物が多く、学びたい要素が多くありました。 また人が好きなので、英語の次に使われているスペイン語を身につけたらコミュニケーションできる人も増えて世界がより広がるという期待もありました。 これらをふまえて、退職後の拠点は迷いなしにバルセロナでした。
色という着眼点からも芸術的センスを感じます…。 移住はビザを使って?
はい。幸運なことに、私がバルセロナに来る1年前から、日本スペイン間ではワーキングホリデー制度が始まって。 学生ビザ(労働時間制限あり)でいくよりも、金銭面での行動可能範囲が大きかったワーキングホリデーのビザでいくことにしました。
それぞれの仕事内容について教えてください。
CREW WORLD編集長:
「CAの可能性を広げる」をテーマに国内外のCAと繋がり様々な形で情報提供を行っています。CAの持つ視点やスキルを見える化できるよう、MUSEのCAに企画を共有したり、自身の持つ情報を共有しています。
空間コンセプトデザイン: 主に、オフィス、学生寮、ラウンジなど人が集まる場所のコンセプト作りをしており、人々の関わりを深められるような空間作りに励んでいます。 (実績:株式会社 bitFlyer 新オフィス、早稲田大学 学生寮 Crevia Will Waseda、Montessori International School など)
スペインでのモデル活動: 主にカタログモデルや動画広告などの出演です。キャスティングと呼ばれるオーディションから撮影まで全過程、スペイン語もしくは英語で行われています。 (実績:FC Barcelona 2019/2020 オンラインストアカタログ、イベリア航空 動画広告 など)
お仕事のしかたは?
CREW WORLD編集長:
「CAの可能性を広げること」をテーマに、毎日のCWサイトチェック、SNSの運用、MUSEとのやりとり、駒崎との情報共有をほぼ毎日行う。
空間コンセプトデザイン: プロジェクトに関わる情報をリサーチ。世界にあるような参考物件や過去に訪れたスペースなどを調べる。リサーチした情報から、どのように人の繋がりを生み出していくかや必要とされる空間全体のイメージを考える。情報と出来上がったイメージを元にして、内装デザイン面でどう表現していくかを洗い出していく。
スペインでのモデル活動: 事務所から送られてくるオーディション会場に出向き、テストショットおよびテスト動画を撮影。セレクションとして選ばれた場合は、撮影前日に衣装確認を行う。撮影は朝早くもしくは夜遅くからのスタート。
会社員からフリーランスに転身してどうですか?
フリーランスという“かっこいい”響きはあるのですが、実際は結構大変です。(笑) 人脈やビジネス的な繋がりが不可欠になり、クリエーションの面だけではなく営業的なことや事務的なことなども自身で全て行うため、皆さんが抱いているような華やかさはあまりありません。
たしかにフリーランス=華やかというイメージはありますね。
税のことなど疑問に思っても、自分で調べたり、必要な場合には税理士さんなどのプロに相談したりなど、細かいところまで確認しなければいけないのがやや面倒です。 あと、何かあった時に(今回のコロナもそうですが)、自分の身を保証してくれる後ろ盾がないため、危機管理を日常的に行わなければなりません。 例えば、取引先を少数に偏らないとか、できる事業を増やしておくなど。
フリーランスの良いところは?
生活スタイルや時間管理は自身でコーディネートしやすいので、友人達との余暇を楽しみやすい環境なところですね。 通勤等がなく、場所を選ばないため、旅行好きで思いつき行動をする私にとっては合っているなと感じています。
自分に合った働き方を実現されていてかっこいいです! そんな詩織さんの目標って何ですか?
まずはCREW WORLDをより多くの人に活用してもらうこと。 CAという仕事を携わった人々が集まり、CREW WORLDを介して新たな世界やコミュニティが生まれてくれたら嬉しいと思います。 CAのコミュニティとしてCREW WORLDが世間でもっと認知され、世の中をより良くする一翼を担えたら最高です! そして、良いコミュニティを生み出す空間をもっと増やすこと! オンラインが中心になるこの時代だからこそのオフラインの価値を再認識したり、オンラインでもどんどん新たなコミュニティの場が増えていくと思っています。
ありがとうございます。 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします!
私もキャリアについて悩んだ者の一人です。 まずはCAの仕事を客観的に見直してみること。 どんな良い点があって、どんなことを吸収できて、次のキャリアを想定した時に、どのようにCAを活用できるかを考えてみてください。 もし、一つでも興味があることを見つけたら、それをテーマに日本中、世界中で見識を深めて欲しいと思います。きっとそれだけでも、新たな道が開くはずです! これからCAのキャリアを始める人にもぜひ知っておいて欲しいなと思います。
インタビューを通して感じたしおりさんの「完璧を求めない強さ」。 新しいことを始めるときって、これで合っているのか、失敗するのがこわい、など不安要素ばかりが頭をよぎり、かなりの勇気が必要だと思います。 そこで完璧を求めて表に出さないよりも、プロからみたら10点の作品だったとしても、まずはやってみること。評価してもらうこと。 そうして10点の作品を作り続けることが100点をつくる一番の近道なのかもしれません。しおりさん、貴重なお話をありがとうございました。
CREW WORLD Official MUSEとして、インタビュワーをさせていただきました!
松永有加
オフィスコンシェルジュ・Official MUSE・ライター
(徳島県出身)
明治学院大学卒業後、日系航空会社にて客室乗務員を約4年間経験。国内外を乗務する。
体調を崩し休職したことをきっかけに学生時代から親交のあった駒崎と再会、キャリア支援を受け転職。現在はオフィスコンシェルジュとして働きながらCREW WORLDの記事執筆、女性向けキャリア&ライフコーチングスクールでキャリアプランナーとして活動中。
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